有田の風、磁(いし)を刻む。
佐賀県西部に位置する日本磁器発祥の地、有田。17世紀初頭(1616年)に朝鮮半島からの陶工らが泉山で磁器の原料となる陶石を発見し、日本で最初の磁器を焼いたと言われています。その後、赤色と白磁の調和性が美しい「柿右衛門様式」や、将軍家への献上品や諸藩への贈答品として作られた「鍋島様式」など様々な様式が生まれ、そして時代に応じて変化してきました。有田に開花した磁器は400年の伝統と技法を今に引き継ぎながら、現代の若い作家や各窯元もまた、独自の意欲作を作り出しています。
聡窯は有田を拠点に作家を擁している有田焼の工房です。 香蘭社の図案部で活躍していた先代・辻󠄀一堂が、1954年に前身である新興古伊万里研究所を設立し、12年後に「聡窯」へ改名し、現在に至ります。代々、辻家は陶芸作家として活躍しており、主に絵付けにこだわり作品を手掛けています。中でも、国内外の情景や自然をテーマに描かれた
陶板作品は、通常の絵画や写真とは異なり、一度焼き上がれば色褪せない、”磁器の絵画”となります。
世界には、自分の想像を遥かに超える絶景がいくつも存在しています。雄大な自然が織りなす風景、人類が築き上げた歴史的建築物など、そのスケールの大きさには驚くばかり。そんな感動と情景を、私は有田の磁(いし)に刻み続けていきます。
陶芸作家 / 聡窯 辻 聡彦